戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
しかし返事はしなくてはならず、中君が筆を取り歌を返した。
挿頭折る花の便りに山樵(やまがつ)の 垣根を過ぎぬ春の旅人
姿を見せない幸村への、品よい返しが出来、それを受け取った幸村は手蹟の清々しさに喜ぶ。
そして迎えがやって来て、幸村たちは都へ戻って行く。
幸村は「必ず、また、折りをみて…」と中君からの返事を手にして心に誓った。
都へ戻ると、幸村は早速中君へ返事を認め、八ノ宮はその文を見て、それでも返事を書く事を勧めた。
「大層好きの道に長けたかたですが、ここにいる姫たちを珍しい人として見ているだけでしょう。戯れでくださっているのだろうから、色めいた文と思わないように返事をすれば良いでしょう」
佐助は中納言になり、公務繁多な身分となったが、久方ぶりに宇治を訪れる。
八ノ宮は再会を喜び、そして、自分が何かあったら残される姫たちを頼みたい、と婉曲に佐助に伝えるのだった。
「以前にも申しておりますが、その事については疎かにするつもりはありません。自分も世を儚く見ているし、何事にも頼り薄く、これからもどれだけの栄えがあるかわからないけれど、この世にいる間はきっと変わらない志は見てもらえると思います」
佐助の言葉を改めて聞いて、八ノ宮は安心し、二人はそのまま仏法について語り宵を過ごすものの、八ノ宮はやはり姫たちの事が気掛かりで何かと姫たちを佐助に頼みます、と遠回しに話され、佐助が姫の琴を所望すると早速八ノ宮は姫に筝の琴を弾かせる。
我なくて草の庵は荒れるとも この一言は離(か)れじとぞ思う
如何ならん世にか離れせん長き世の 契り結べる草の庵は
八ノ宮の歌に佐助は返し、八ノ宮はこの返しの言葉に嬉しく思うのだった。