戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
そうだな、この姫宮は何もわかっていない。
ただなよなよして、自分の感情を持たず、流されるだけのおんなだった。
俺に唯一言い返したのは、佐助を産んで姫宮は落飾し、その後紫を亡くした俺が無常を感じ、話し相手として足をむけた時だった。
咲く花を見て、紫が好きだったな、と思い、花が好きだった人が亡くなっても花は咲くのか、と話し掛けたところ、戻ってきた言葉がこれだった。
「もう世を捨てたから、私には関係ありません」
あまりなつれなさに、俺はがっかりしたものだ。
俺をその時なぐさめてくれたのは、夕霧の母代わりになってくれた花散里だったか。
ああ、俺の事はもういいか、とにかく入道の宮と言われるようになった女三ノ宮は、落飾しても娘時代の時と変わらずおっとりと、息子である佐助をむしろ頼りにしているようなところがあったのだ。
さて、年が明け、匂ノ宮こと幸村は願を掛けた御礼参りとして長谷寺へ赴くが、途中宇治で中宿(なかやどり)をする事とした。
長谷寺へ参った帰路に宇治へ寄る幸村とその一行。
宇治川のほとりに俺から息子の夕霧に渡った別邸が有り、対岸には八ノ宮の住まいが遠望出来た。
その別邸にて一休みした幸村は夕暮れに起きて、琴をつま弾き、他の者もそれに合わせて合奏を楽しみ、音色は対岸の八ノ宮の住まいへも響いていた。
その音色を聞きながら八ノ宮は一人思う。