戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
佐助は八ノ宮から姫君の事を持ちだされるとは思わなかったので、内心驚く。
「…姫たち、是非佐助様の前で奏でなさい」
佐助の前で、姫君たちに八ノ宮は演奏するよう申し付けるが姫たちは断り続け、とうとう佐助の前で演奏する事はなかった。
「大層気を付けて育てた娘たちですが…」
八ノ宮はがっかりしつつ話す。
「今日明日もしれぬ自分の身を考えると、残される娘たちが哀れでしかたなりません。このため世を捨てる事が出来ないのです」
しみじみと話す八ノ宮に、佐助はいたわしさを覚える。
「どうぞ俺に申し付けてください。この身に命がある間は、殊更のお後身やお言葉が無くても、心を俺に掛けてくだされば姫たちのお世話をさせていただきます」
八ノ宮はその言葉に「大層嬉しいこと」と心の内を打ち明けた。
しばらくして八ノ宮は夜明け前の勤行の為に仏へ向かい、佐助は西の廂へ下がり弁の君を呼ぶ。
呼ばれた弁の君が口を開いて話した事は、壮絶な死を迎えた、本当の父、柏木の事。
愛しすぎた女三ノ宮が懐妊し、その父親が自分で無いと知った俺から、うとまれる恐怖で動けなくなり、女三ノ宮の事だけを気に掛け死ぬ直前まで愛し続けた、柏木。
話しを聞き、佐助は、他にこの事を知る者が居ないか問うが、事情を知るもう一人の女房は数年前に死去しており、この事を知るものは他におらず、弁の君もこの事を佐助に伝える事が出来て安堵していた。
この昔話しですっかり夜は明けているのに気付き、最後に弁の君は古びたものを佐助に渡した。