戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
秋になり、佐助は宇治へ赴く。
八ノ宮は佐助の訪問を大層喜ばれ、山里ならではの品でもてなしをし、その後は宇治山の阿闍梨(あざり)も招き、経典の疑問など講義を受ける。
その後、阿闍梨が下がり、八ノ宮と佐助はいつまでも話し続け、秋の終わりの東雲を思い出して話す。
「琴の琴は君子の友。このような暁には友がなければどうなのか…」
八ノ宮は琴の琴の名手で有り、わずかな笑みを浮かべながら穏やかに言う。
「色も香も捨てた身ですし、昔の事はもう忘れてしまったのですが」
とは言うものの、琴の琴と琵琶を運ばせ、琵琶を佐助の前に置いた。
佐助は琵琶を手にし、調べを合わせ、爪弾きに音だけを漏らして言う。
「以前に仄かに聞いた音とはとても同じに思えません。この琵琶が素晴らしいのかと思いましたが、違うようです。とても俺には弾きこなせない…」
佐助に八ノ宮は言う。
「そんな素晴らしい手が、どこからこの宇治の山里まで伝えられたのでしょう…」
そして八ノ宮は琴の琴を掻き鳴らし、趣ある曲を一つ奏で、琴の琴を脇へ寄せる。
「この辺りでは筝の琴の音が仄かに響く事があります」
と八ノ宮が話題にしたのは、姫君の事だった。
「心を留めて教えた訳ではないので、心に任せて掻き鳴らす事もあります。それでも調べのように聞こえるのは、川波が拍子を整えてくれるからでしょう」