戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
佐助は宇治の美しい姫君たちの事を誰かに話したくなる。
その相手は、唯一人。
匂ノ宮こと幸村は、常日頃、寂びれたところに美しい娘が住んでいたら面白いだろう、という状況に憧れを抱いていた。
幸村は何でも手に入る、現帝と中宮の三番目の宮という立場で、色めいた事にも御代で随一と噂される人だった。
定められた相手は面倒くさがり、特定の相手を持たない幸村は、それでも自分の立場からいつかは誰ぞの姫と縁組を持つ必要がある事は理解していたが、今はまだふらふらしているほうが楽しい。
佐助は幸村をある日訪ね、いろいろ世間話しをした後、宇治にひっそりと住まう八ノ宮の姫君たちの事を話す。
「有明の月の下で筝の琴と琵琶を弾じるお二人はこの世の人とは思われず、とても美しい姫君たちなんだ。霧にしとどに濡れてまで訪問した事を、一言ねぎらって欲しくて簀子にあがり勝手を知る女房が来るまでの姫君の穏やかで慎ましやかな対応が、俺にはとても心に沁みるものだった」
幸村は身を乗り出して佐助の話しを聞く。
「俺ならともかく、幸村のように高貴な身分のかたは、そうそう宇治まで足を運ぶ事も出来ないし、気の毒としか言いようがないよ」
幸村のように親王という身であれば、都を離れてまで忍び歩きは出来ない。
「あーあ、高貴な身分なんてこういう時は本当に邪魔だな。姫たちの事、何かまたわかったら、必ず俺に教えてくれよ?俺が寂びれたところに住むあえかな美しい姫を訪れる事に憧れている事、知っているだろう?まさにその宇治の姫はそんな人じゃあないか」
幸村は佐助に念を押し、また姫君たちの事で知った事が有ったら教えるよう頼むが、それを聞いたところで宇治まで気軽に行かれる身分で無いので、悶えるように、その美しい宇治の姫君たちを想像するしかなかった。