戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
青々とした竹を結い渡した透垣(すいがい)があり、佐助ノ君は透垣の戸を見付けそっと開けて中を覗く。
うっすらとした霧の中から、滲むように衣装の鮮やかな色が浮かび上がる。
簀子のあたりに人が居り、更に中にも一人。
雲間を抜けた月の光が、御曹司(みぞうし)の柱に当たり、強く輝き、そこへ琵琶の撥(ばち)を手にした美しい姫君が一人、柱の陰に隠れるように座している。
「扇で月を招き返せるかわかりませんけれど、この撥で月の光を招き寄せられましたわ」
すると内から優美でおとなしやかな声がする。
「『入日を返す撥』と申すのは『蘭陵王(らんりょうおう)』の舞にもありますわね。でも、月の光を撥で招くとは、不思議な事を考えられること」
その声の姫の前には筝の琴が置かれており、そして琵琶を持った姫君が言う。
「でも琵琶の撥を納めるあたりは『陰月(いんげつ)』と言うでしょう?月を呼び返す格好の縁ですのよ?」
楽しそうに笑う姫君たちに、まさか胸をときめかせる程の美しい姫君たちがここにいるとは思わず、佐助は釘付けになってしまう。
やがて女房がやってきて「人がお見えでございます」と告げにきた為、姫君たちはゆるゆると動き、御簾の中へ入って隠れる様を、霧の中で見えた夢幻のように佐助には思え、ぼんやりとそっと見送るだけだった。
先程の留守居の男が迎えに来たので、佐助は強引に姫君たちの前に案内するように伝える。
その口上(こうじょう)を聞いた姫君たちは、まさか佐助に姿を見られていたと思わずにいた。
「まさか、先程の琴の音をお聞きになられたのかしら…」