戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
八ノ宮に姫君がいるのを、何の気無しに知る事になった佐助。
しかしながら特に姫君たちに興味を持つ事なく日は過ぎ、公務が落ち着いたある日、佐助は宇治行きを決めて出掛ける。
佐助が宇治へ到着した時、留守居の男から、八ノ宮は四季の念仏のため宇治山のお堂へ籠っており、七日は戻らないと聞く。
そして留守居の男は山の八ノ宮へ、佐助の来訪を伝えに人を行かせようとするので、佐助はそれを止めた。
「お勤めを邪魔してはならないからお伝えには及ばない。それよりひどい霧で大層濡れてしまった。姫君に、衣手(ころもで)を濡らすだけの虚しい訪問を終え、帰るこの身の儚さを『お気の毒』の一言でも頂ければ、気も慰められるのだけど」
留守居の男は早速それを伝えに行こうとするが、佐助はそれを止める。
「噂に聞いていた御琴の音が聞こえる。しばし隠れて聴く物陰はあるだろうか?遠慮なくお側へ立ち寄って、琴の御手を止める結果になっては口惜しくあるんだが」
留守居の男は続ける。
「他から人のおいでのない折には、明け暮れあのようにお過ごしでいらっしゃいます。でもたとえ下人でも、都から人が参られお留まりの節には、決して物音すら立てられません。大方の思し召しを考えると、姫君方がいらっしゃるのにお隠しになられるのは、『世にありふれた者達に、姫君の御事を知らせまい』と宮のお心がお有りになるのでないか、と思われます」
留守居の男がやんわりと断るにも関わらず、佐助は強引に言う。
「なんであれ案内せよ。俺はこのように暮らす姫君のご様子を、ただ気遣われるだけだ」
仕方なく留守居の男は、佐助を庭先へ案内する。