戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第31章 八ノ宮大君の巻―佐助ノ君・幸村ノ宮-<R18>
「おねえさま、お客様がいらしたようですわね」
八ノ宮の中君が、姉の大君舞に話し掛けると、舞も小さく答える。
「そのようね。こちらにいらっしゃる事は無いけれど、しっかり格子も几帳も下して、姿が見られないようにしましょう。鉤(かぎ)も差してね」
田舎で育った娘二人は、父宮以外のおとこはろくに知らない。
どう接して良いかも無論わからないので、二人は肩を寄せ合い、姿を知られないように暗い部屋に隠れるだけだった。
「八ノ宮様、佐助でございます。この度はお言葉に甘えて、お話しを賜りに伺いました」
佐助の清々しい姿を見て、八ノ宮は好意を覚える。
「まだとてもお若いのに、御仏の道を究めたいとはご殊勝な事で」
八ノ宮は痩せてさっぱりと、世俗的な匂いを一切させず、佐助はその姿や雰囲気に好もしいものを覚える。
「宮様程ではございませんが、早くから仏の道を知りたいという心を持って育ちました」
佐助の挨拶に八ノ宮は頷き、早速二人で仏法について話しを始めた。
佐助は、八ノ宮の知識が豊富でありながら、けしてその知識をひけらかす事なく、しかし質問に対し的確な答えを佐助に与えてくれる八ノ宮にすっかり心頭していた。
「しかし…宇治は…憂しというだけあった、物寂しいところですね」
佐助の言葉に、八ノ宮は同意し、しかし、言った。
「私は仕方なく、ここに住まいを移しました。まだ幼かった頃、恥ずかしい思いをしまして、都で生きていく事が出来なくなりました。妻がいた頃はまだ良かったのですが、妻が身罷ってから、二人の娘の成長を一人で見てゆかなくてはならず、それに大層心を砕きました」