戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
やっと口を開いた義元中将の問いに、舞は答える。
「だって…私にはどうしても、義元様が『私』として愛してくださる理由が見付かりませんもの。幼い頃から育ててくださって、それは身内を失くした気の毒な娘を、ご自分と同じ境遇だと思われ、お育てくださるのかと思いましたけれど、ご自分のお好みの女人に私を近付けようとなさっているのに途中で気付きました。それが誰なのか…簡単でしたわ、私がどうして『紫』と呼ばれるのか…藤は紫、藤壺の女院様のような女人に、私をなさろうとしたのでしょう?」
「俺は…舞という一人のおんなを愛している!」
義元中将は全てを否定するように、自分の本心を伝えるが、舞は感情を隠した瞳で義元中将を見つめる。
「そうおっしゃってくださるのはありがたい事ですけれど、義元様の心の全ての源は母更衣様への愛、幼くして亡くされた母更衣様への思慕が愛と代わり、藤壺の女院様と私へ心を留めてくださった」
舞は静かに義元中将のすぐ側にいざり、そっと義元中将を抱き締める。
「お気の毒な義元様。あまりにお美しすぎる母更衣様を早くに亡くされ、愛情の伝えかたをお間違えになられた…」
「…それでは…俺は…いったい…今まで何を…愛してきた、と言うのだ…」
義元中将は舞に抱き締められたまま、ふるふると震え、全てを信じ難い表情に変化させていた。
「私は義元様を見限り、御仏にお仕えするつもりでおりました。けれど、このような義元様を放っておく事も出来ません」
舞の言葉に、自分の片手を、抱き締める舞の腕にかけ、舞を見つめる義元中将の表情は不安にさいなまれたものだった。
「でも…これからも義元様が私と一緒にいてくださるというお気持ちでしたら…」