戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
舞の言葉を途中で切って、義元中将は言う。
「そうに決まっている!俺は舞だけが居てくれれば良いのだ!」
「…わかりましたわ。義元様がそこまでおっしゃるのでしたら…私はこれからも義元様のお傍におりましょう…」
優しく義元中将を抱き締める舞に、義元中将は安心したような表情になり、舞の胸元に顔を擦り寄せる。
「ああ…俺には舞だけだ…ずっと側にいてくれ…」
その言葉を聞いて、舞の唇の片端に酷薄な笑みが浮かぶ。
『義元様の心はこれで縛れる…私をご自分の好みの女人に育てていらして、私の個性を潰した義元様へ、これからは私のこの病んだ愛情を呑みこんでもらうのよ…!』
舞こと紫の上は、自分が藤壺の女院と義元中将の母更衣である桐壺更衣の傀儡(かいらい)である事に気付いており、いつかその復讐をするつもりでいた。
その機会がようやく巡ってき、これからは舞の歪んだ自分だけを見つめて欲しい、自分だけを大切にして欲しい、という愛情で、義元中将を縛るのだ。
『でも義元様は、私を一番愛してくださっている。だから私の愛情はきっと喜んでくださるでしょう?だって、私だけを見つめて、私だけを大切にして、私をいつまでも一番に愛して、とお願いするだけなのですもの』
「義元様」
舞は優しく腕の中にいる義元中将に声を掛け、顔をあげた義元中将にそっと口付け、微笑みながら言う。
「いつまでも、いつまでも、私を愛してくださいね?他のかたを見ては嫌ですよ…?」
その言葉に義元中将は、反対に舞を抱き締めて、誓う、と何度も言いながら、舞の髪や顔に口付けを落とし、やがて二人の世界へ堕ちていった。
<紫の巻 終>