戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
朱雀院がいたわしいと思うのは舞の本心だが、義元中将の本音に、冷静に舞は気付いていた。
『女三ノ宮様の母女御様は、亡き藤壺の女院様と血のつながりのあるかた。義元様は女院様の面影を探して、姫宮様のご降嫁をお受けになったはずだわ…』
舞の矜持もあって、これを口に出す事は出来ない。
むしろ代わりに女房達がこそこそ言うのを聞きとがめる。
「朱雀院様や姫宮様を悪く言ってはいけません。朱雀院様の親心を考えると、母御を既に亡くされた姫宮様の将来を深く案ずるのは当然ですよ。だからこそ義元様に姫宮様を託されたのですし、むしろ姫宮様が私を疎ましく思われず、仲良くしてくださったら良いのですけれど」
「まあ…舞様はなんて人のよろしい事で…」
女房達は呆れるが、舞はあくまで外見は穏やかに、女三ノ宮の降嫁の準備を自ら言って手伝うのだった。
舞の助言も有り、大層立派な支度の出来た六条院春の町の寝殿に、ある夜、立派な牛車が到着する。
義元中将は寝殿に横付けされた牛車から、小さなきゃしゃな娘を抱き上げ、寝殿へ連れていく。
この娘こそ、朱雀院の女三ノ宮で、この夜、義元中将に降嫁したのだ。
そして、この日、一人寝をしなくてはならない舞は、女房達の手前はあくまで良き『紫の上』を演じていた。
御帳台の中に静かに入り、寝た振りをすればやがて女房達も眠りに入るが、眠れない舞は一人、義元中将が降嫁した女三ノ宮に何をしているのか想像し余計に眠れず、寝返えれば起きているのか、と女房に気付かれる事から寝返りも打てず、声も出さずにそっと涙を流し、それを袖口に押し当てていた。