第29章 紫の巻―義元中将－＜R18＞

俺はしかしこの関係のままで、彼女に援助はしようと決める。

朝顔からこれだけきっぱり断れたら、かえって清々しい印象を受け、父親代わりとして、家の体裁を保てる程度の援助をしていこうと思わされるのだった。



俺は春の御殿の西の対で、裸の舞の肩を抱いて横になっていた。

ひとしきり愛を交わした後、俺はよく、自分を横切っていったおんなの事を舞に話す。

「朝顔に振られたよ」

俺の言葉に、俺の顔を驚いて見上げる舞。

俺は舞のまぶたに軽く口付けを落とし、話し出す。

「きっと舞は女房達から聞いていただろう？
俺の従姉で、桃園元式部卿の宮の御娘、元斎院のかたで、とても聡明なかただ。
俺は彼女に朝顔を贈った事から彼女を朝顔と呼び、最近斎院を降りた事からずっと求愛をしてきた」

舞は表情を消し、じっと俺の顔を見つめて話しを聞いている。

「ところが先日、あまりに俺の返事に昔の事ばかり持ち出すので、はっきり聞いたところ朝顔自身の声で、俺には世話にはならないと断られたよ」

「…朝顔様ご自身でお話しになられたのですか？」

おんながからだの付き合いの無いおとこに、直接話し掛けるなんて有り得ないこの時代。

舞が驚くのも当然だが、俺は事実を話すだけ。

「ああ、そうだ。俺と朝顔には、今迄もこれからも男女の仲にはならず、時折文を交わすだけの友人としての付き合いになったんだ」