戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
改めて何故見せん人の上に 斯くありと聞く心変わりを
朝顔からの返事は俺に全く興味が無い、それを覆す事もない、というそっけないもの。
しかし、俺達にはこれが相応しいのかもしれない。
「それでは今後は、つれづれに文を遣わす友人として接してくださいますか?」
俺の質問に、もう隠す必要が無いと、朝顔が自ら答える。
「そういう事でしたら喜んでお返事を差し上げましょう」
硬質な色気を感じさせない少女のような声は、おとこを知らないまま年を経るおんなにはふさわしい声音なのかもしれない。
ぼんやりそんな事を考えていると、朝顔から俺に最終通告とばかりにもう一声掛けてきた。
「義元様の女人の一人になってしまいますと、つまらない愛憎に一喜一憂する事になりますわ。私はそういう世界に足を踏み入れたくありませんの。
ですから、私の事はもう、諦めてくださいませね」
成程、そういう事か。
確かに俺には紫以外にもおんながいて、その中の一人になるのが嫌だと言うのか。
一人で生きて行く術の無いおんなは、誰かおとこに寄り添わないと生きて行かれない。
その典型が花散里だ。
彼女は麗景殿の元女御の妹で、もともと家も立派な家柄だが、女御殿があまり帝から寵愛を受けなかったことから家はすっかり没落し、日々の生活も事欠くようになっているらしい。
だからこそ、おんなとおとことしての愛はないけれど、俺は花散里へ援助という名の愛を贈り、彼女はそれを受ける事で、俺からの庇護を愛として受け取っているのだ。
朝顔は果たして、寂び行く自邸で、ひっそりと堕ちる生活が出来るのだろうか。