戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第29章 紫の巻―義元中将-<R18>
そんな相反した感情を自分で整理出来ない時もあるけれど、そういう時は大抵義元様は、他の女人のところへお出掛けになっていらっしゃるから、私は一人御帳台で不安を抱えて眠る。
早くこんな生活から離れたい、でも、やっぱり、義元様から離れたくないよ。
朝顔の前斎院(さきのさいいん)との噂が舞の耳に入る。
朝顔は、義元中将とは従姉にあたる女人で、以前より義元中将は文を遣わし、求愛をしていた。
しかしながら朝顔は義元中将に惹かれているものの、義元中将に関わった女人達全員が幸せで無い事に気付いており、自分がその愛憎の中に入る事を拒み、義元中将の愛の囁きも全て知らん振りをしていた。
「久し振りにお目にかかったというのに、ずいぶん冷たいあしらい方ですね。
人知れず神の宥し(ゆるし)を待つままに あたらつれなき世を過ごすかな」
恨めし気な義元中将の声に、朝顔は帳台と御簾を隔てた更に奥に座し、女房を通じて返事をしていた。
「おしなべて夢の哀れを問うさえも 誓いし事と神は禁めん(いさめん)」
前斎院からのつれない返事に、義元中将は口を開く。
「神にお仕えする立場から解放されているのに、未だに神との誓いにこだわっていられるのか。いつまでそのように、俺につれない態度をとられるつもりですか?」
義元中将の言に、朝顔付きの女房はそっけなく答える。
「いつもと同じ事ですし、何をどうしましたら冷たいのか、私にはわかりかねますわ」
「俺の文は読んでくださっていると思います。俺の考えは理解なさってますな?」