戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第27章 六条御息所の巻―蘭丸中将-<R18>
「それなら放っておきましょうか」
真白の君の言に、さすがに中将の意味はぎょっとするが、真白の君は続ける。
「だって、誰から届いたのかわからないのですもの、返事のしようがないでしょう?
字でどなたかわかったとしても、名乗らないで文を置いて行ったのですし、返事が欲しいという事では無いと思いますけれど」
「…それもそうね。では放っておくことにしましょうか…」
二人へ届いた、差し出し人不明の文は、そのまま無視される事になってしまった。
「気が付きませんでしたか?」
管弦の遊びをしている六条御息所邸に、蘭丸中将が訪れる。
案内する真白の君を、途中で袖を引いて歩みを止めさせ、腰を抱いて蘭丸中将は囁いた。
「…何の事ですの?」
真白の君が広げていた檜扇で顔を隠したまま言う。
「少し前に、差出人不明の文が届いてるでしょ?あれ、俺が贈ったんだけど」
「…蘭丸中将様、私共、差出人不明の文は何通もいただきます故、蘭丸中将様の文がどれか…申し訳ありませんがわかりませぬわ」
蘭丸中将が囁いた事を、わからぬの一言でばっさり切り落とす真白の君。
「ふぅん、そんなにたくさんもらうんだ。貴女は私より、そのたくさんの文をくれるおとこ達のほうが好きなんだね」
女房の恋にまで嫉妬し出す蘭丸中将の心境は、常に一番でありたいから、に過ぎない。