戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第27章 六条御息所の巻―蘭丸中将-<R18>
「真白の君様もご一緒でしたか。真白様にも同じく名をおっしゃられないかたからの文を、お部屋にお運びしております」
「ありがとう」
女童は役目を終えたとばかりに戻ろうとしたので、中将の君はちょっと待つように言い、部屋で中将の君の戻りを待っている中将の君付きの女房が、ごくろうさま、と女童に懐紙に包んだ菓子を渡した。
「え…良いのですか?ありがとうございます!」
女童は喜んで戻って行き、中将の君と真白の君は顔を見合わせた。
「誰か真白の君の部屋へ行って、届いた文を持ってきておくれ」
中将の君が発し、中将の君に仕える女房が、真白の君宛てに届いた文を取りに参る。
同じ日に、名乗らぬ者から二人に届いた文。
二人は中将の君の部屋に入り、中将の君の文を見る。
今でも美しいが、まだ上達すると思われる麗しい字は、やはり蘭丸中将からのものだ。
真白の君に届いた文も、やはり蘭丸中将からだった。
両方とも歌は違えど、愛しい貴女に早く会いたいです、といった歌が、優美な筆で書かれていた。
「お若いのに字はお綺麗で麗しいわ、さすが蘭丸様ね」
「でも歌自体は違っていても、内容は同じだし、その辺は手抜き感が拭えませんね」
二人は辛辣に蘭丸中将の文を審査する。
「さて、どうしましょう。御方様なら添削してお戻しするという手が使えますけれど、私達ではねぇ。それに誰から来たかわからない事になってますからね」