戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第25章 藤壺の巻―佐助中将-<R18>
愛を、こどもという秘密の形で共有する二人は、東宮となった子に六条御息所の姫君を入内させ、彼女を将来の秋好中宮とする事で、完全に実権を握る。
その頃には落飾して女院と言われるようになる舞に、もう愛を囁く事は佐助には出来なくなるものの、政治的な関わりを二人は持ち、東宮を帝にする為に画策は続ける。
東宮はやがて冷泉帝として即位し、ある日、舞は佐助中将を呼ぶ。
女房が全て引き払うと、舞は話し出した。
「佐助くん、今迄ありがとう。貴方の愛を受け入れられなかったのは、帝を帝にする為。
ほんの少しの危うい噂も、帝を引きずり下ろせるのを知っているから、私は佐助くんを無下にしても自分の考えを貫かなくてはならなかった」
「舞さん…」
「私が落飾したのも、桐壺帝を失ってから、佐助くんの更なる熱情が怖かったから。
私と佐助くんが愛し合っているのを、絶対知られてはならなかったから」
一息つくと舞は言った。
「佐助くん、大好きだよ、愛してる。私の好きな人は桐壺帝じゃなくて、佐助くんなの」
「舞さん…」
佐助は息を呑み、名前しか呼ぶ事が出来ない。
「ごめんね、こんな姿になってから、佐助くんに告白するなんて。
でも、佐助くん、貴方が好き」
佐助中将は御簾の中に入り、微笑む舞の両頬を自分の頬で挟み、口付けをする。
舞の両眼から涙が溢れる。
「どうして泣くの?舞さん、俺はずっとずっと好きだった。
舞さんがそんな姿になっても、俺は舞さんを愛してる」
「うん…うん…ごめんね、こんな姿で」
涙を流す舞を抱き締め、佐助中将は言う。
「どんな姿だって良い。俺達はもう二人で地獄へ堕ちるんだろう?
だったら今更落飾していたって、俺達には怖いものは無いさ」
舞も佐助中将を抱き締め、二人は仏を恐れぬ愛の行動へやがて移る。
二人の歪で純な愛は、二人の子が帝となった事で結実した。
けして表には出せない愛だが、二人には秘密に燻る背徳の愛であり、それはむしろ二人の心を激しく燃やすものであった。
〈藤壺の巻 終〉