戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第23章 女三ノ宮の巻―信玄中将-<R18>
そして偶然が起きる。
舞の前が人少なの状態になり、小侍従はここぞとばかり衛門の督を呼んだ。
「本当に御簾の外からお声を掛けるだけですよ?
絶対帳台に踏み込んだりしないでくださいね」
何度も何度も小侍従は衛門の督に言い聞かせ、その都度衛門の督は熱に浮かされたように、わかったを繰り返すだけだった。
そして一人で帳台に入った舞の周囲に、誰もいなくなるという奇跡が起きた。
ふらりと衛門の督は舞の横になる帳台前の御簾に足を運び、そこで一度足を止めたが、止められない気持ちが溢れ、衛門の督はそのまま御簾をからげて、帳台へ足を踏み入れた。
「…信玄様?」
柔らかい声が自分のおとこの名を呼ぶ。
ここにいるのは信玄中将ではなく、舞の罠にかかった衛門の督。
「舞様…初めてお目にかかります、衛門の督です…」
そっと舞に近寄りながら衛門の督は名乗る。
「…衛門の督…なぜ、ここに…?」
舞は内心してやったりなのだが、ここは演技で驚いて世間知らずの内親王を演じる。
「蹴鞠の日、猫がからげた御簾の隙間から、舞様を垣間見ました。
それから美しい舞様の姿が眼に焼き付いて離れません…
どうぞ一夜のお情けを、俺にいただけませんでしょうか…」
「…そんな…私は信玄様の妻でございますわ…衛門の督様と契るわけには参りませんの。
嫁入り前の内親王だった頃でしたら、喜んで衛門の督様のお相手になりましたのに…」