戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第1章 夕顔の巻-政宗中将-<R18>
「これはこれは…!母も政宗様がいらしてくださいましたら、具合もきっと良くなりましょう。
しかし、母は身分高いかたのお越しになるようなところに居りません。
お気持ちだけちょうだいし、この事を母へ伝えて参ります」
「いや、場所はどうでも良い。俺は乳母に会いたいだけだ。
早速陰陽師に、見舞いに良き日を占わせよう」
「政宗様はなんとお心のお優しい…」
近くに控える女房達が感嘆の声をあげていた。
陰陽師に占わせて、その日、政宗中将は牛車に乗って五条の乳母の家へと向かっていた。
五条のあたりは貴族の住むところではない。
雑多な音が響きわたり、せせこましい、家と言ってよいのかわからないようなあばら屋が建ち並ぶのを、珍し気な表情で牛車の中から覗く政宗中将。
やがて牛車が止まり、外から惟光の声が聞こえてくる。
「到着いたしました。
ただいま、牛車を榻(しじ)から外し支度いたしますのでお待ちください」
その言葉に、扇をぱちんと鳴らして了解の意を伝える。
ふと目の前の家を見ると、こざっぱりした家の外観に政宗中将は興味を持つ。
垂らした簾から中がうっすら透けているのも好ましい。
その透け具合から、若いおんながいるようだ、と政宗中将は気付く。
何か声を掛けようとするが、支度が出来たと声が掛かり、それまでとなった。
乳母はかなり病が進み、状態がよくないようだったが、政宗中将直々の見舞いに涙を流して感謝する。