第3章 末摘花の巻―光秀中将－＜R18＞

世間知らずで恋人のいない舞姫では無論生計をたてられず、召使がこっそり常陸の宮のお道具類を売って、食べるものをやっと用意するありさまだった。

その召使達も困窮する暮らしに他家へ仕えに行ってしまうありさまで、残っている彼らは他所へ働けるクチの無い者たちばかりだった。

「…あら、命婦。里下がりしていらしたの？」

おっとりと答える舞姫。

頭のねじが一本足りない、と噂をされるが、おっとりした至極一般的な姫様だ。

「はい、数日お世話になります」

「こんなところではろくにくつろげなくてごめんなさいね。
でもゆっくり休んでいってちょうだいな」

ちゃんと会話が出来るし、下々への気遣いも完璧だ。

そうすると、容姿がイマイチよろしくないのか、しかし命婦は未だ舞姫の顔を見たことがない。

舞姫はとても恥ずかしがりやで、もともとは大輔の命婦と話すのも恥ずかしいという、深窓に輪を掛けた二重の深窓の姫だったのだ。

しかし、大輔の命婦がしつこく声を掛け続けたおかげで、命婦とは会話が出来るほどの仲にはなった。

「どうでしょう？そろそろ舞姫様のお姿を拝見したいのですが」

噂を払拭出来れば、姫目当ての殿方を呼び込む事が出来、この逼迫した暮らしから抜けられるかもしれない、命婦はそう思い、姫の姿を確認したいのだが、舞姫本人が姿を見せるのを嫌がっているので、どうにもならない。

「…まぁ、命婦ったら…私が人前に出るのが苦手なの、おわかりでしょう？」