戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
明石女御は舞に続ける。
「私が今、女御でいられるのは紫のおかあさまが私をお育てくださったからなのもわかりました。でも、私が女御以前に私でいられるのは、おかあさまが私を産んでくださったからでしょう?そして明石のおじいさまが、私の幸運をずっと祈ってくださったから」
明石女御は舞へ、一筋涙を流しながら美しい笑顔を見せた。
「明石のおじいさまの祈り、そしておかあさまが私を紫のおかあさまへお渡しくださったから、今の私があるのです。ありがとうございます」
「…なんて勿体ない、女御様…」
舞は女御の自分の立場をわかり、それに感謝する優しい心を持っている事に感動し涙を流し、そして紫の上の愛情によって、このような貴婦人に育った事に更に感謝するのだった。
「ありがたいお言葉でございます…これからも私は女御様にお仕え致しますので、お幸せをお掴みくださいませ…」
「…ありがとう…おかあさま…」
明石女御も涙をほろほろとこぼす。
「私は貴女様を紫様にお渡しした時に、二度と貴女様にお会いする事は叶わないと思って過ごして参りました。でも、入内なさるのに伴い、女御様付きの筆頭女房として付き添いが叶い、こうして女御様の側近くでお仕えしております。
女御様がいつまでもお幸せでいらっしゃる事、そして后となられて明石の亡き父…女御様には祖父に当たる者ですが…の望みを叶えてくださる事…それが叶いますれば、私には望外の幸せでございます」
舞はこうして、娘である明石女御が素直な美しい性質を持っている事に、紫の上の教育の賜物に感謝し、明石女御と母娘の語らいが出来た事に、たとえそれが一時の事でも嬉しくて、全ての悲しみが流れ去っていくのを覚えるのだった。
〈明石の巻 終〉