戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
一度言葉を切り、また舞は話す。
「紫様のお陰で姫は東宮様へ入内出来るのです。私の許ではいくら育てる事は出来ても、鄙育ちと身分が低いのは隠せませんでしたから」
紫の上から舞へ謙信中将を通して話しが有ったのは、そのすぐ後だった。
入内する姫はまだ幼く、かと言って紫の上がずっと付き添う訳にも参らないので、筆頭女房格として、舞に付き添わないか、と。
どんな立場であれ、姫の側にいられるなら、むしろ舞は喜んでその話しを受けた。
そして姫は入内し、桐壺へ部屋を賜るが、明石女御と呼ばれる事になる。
東宮の明石女御への寵愛は格別で、やがて姫は懐妊し、男児を産む。
この男児が次代の帝である事は事実で、それを知った明石の入道は満願叶った、と全てを捨て、山の奥へ姿を消す。
「母上、父上が…」
入道からの文を舞が読み、尼母はやはり連れ添った夫が、死を覚悟して入山した事に涙を流すが、産まれた赤子の美しさ、愛らしさにいつまでも泣いていてはならぬ、と明石女御の世話を心を込めてするのだった。
明石女御はある日、尼母から紫の上は育ての親であり、産みの親は舞である事を聞かされる。
「…おかあさま?」
舞は女御から声を掛けられ、ひどく驚く。
「尼上から伺いました。紫のおかあさまがずっとおかあさまと思ってきましたが、貴女が私の産みの母だそうですね。私、明石女御と呼ばれるので何故かとずっと思ってましたが、尼上から聞いて、自分の境遇を理解しましたの」