戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
謙信中将は、都で貴婦人として姫を育てる為、姫と乳母を都へ連れて行ってしまった。
「姫…」
舞と母の二人で、抱き合って悲しみに暮れる。
大堰も姫が居たから淋しくなかったけれど、今は風の音が狂おしい程もの悲しい。
謙信中将からの文には、無事姫を紫の上に預け、数日はぐずっていたものの、姫はすっかり紫の上になつき、貴婦人として教養を教え込み、悪いようにはしない、と書いてあった。
数年が過ぎ、姫の成人を寿ぐ裳着(もぎ)の式が行われた。
腰結(こしゆい)は秋好中宮で、六条御息所の御娘だった人だ。
六条邸の冬の町の主として、他の町の主より万事控えめにしている舞は、謙信中将より小さかった姫が大人となる裳着の式を迎え、その後東宮へ入内される事を知る。
「母上、とうとう姫が裳着を迎え、その後東宮様へ入内なさいますよ」
舞は尼となった母に言う。
尼母は舞に穏やかな笑みを浮かべて返す。
「そうですか、もう姫も大人なのですね…いったいどれだけ美しい姫に育ったのか…紫様のご養育は、実の娘でも出来ないところまで大層愛されてお育てになられた、と女房から聞いてますよ。だから今となっては良かったのですね、姫を私達から手放して…」
「そうですね、母上。姫を手放した時は、二人で悲しみましたね。でも、姫は紫様に大層お可愛がりいただいてお育てくださったと聞いて、本当にようございました」