戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
「…父上様はいかがされるのですか?」
「私は頭を丸めた法師です。今更都に行く立場ではござりません。
私はここで、貴女や姫たちの幸せを祈り続けます」
入道は穏やかな笑みを浮かべ、これはもう決まった事だ、舞や姫の幸せの為だ、と言って考えを曲げる事はしなかった。
入道は謙信中将からの文に返信として、舞と姫を大堰川のほとりの邸を手入れして、そちらに移す旨伝えた。
謙信中将は明石からすぐ都に来るのも気兼ねするだろうと慮り、大堰なら明石よりまだ近い事から移るのを納得し、移る日に必要な人や牛馬を手配して、明石へ寄越した。
「ああ、これでもう、この可愛い姫ともお目にかかれないのですね。
とても悲しいですが、貴女と姫の行く末を考えての事です。
必ず幸せが待っています、どうぞ今日の事は嘆かず、これからの幸を掴んでください」
入道の心を込めた言葉に、舞や妻は涙を流すが、これ以上の涙は不吉だという事で、早々に大堰へ向けて出立して行った。
生まれ育った明石をとうとう離れる事になった舞。
姫の為とはいえ、自分の運命までこれ程大きく変わるとは少し前まで思っていなかった。
「大丈夫ですよ、舞様。大堰川のほとりでしたら、都よりこちらの風情に近いところでございます。都にも近うなりますから、謙信中将様もお越しになりやすうございましょう」
乳母の励ましに薄く笑みを浮かべ、舞はそうね、と答えた。
姫の将来の為、舞や姫たちは大堰へ向かい、やがて入道が急いで手入れを入れさせた邸に到着した。