戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
謙信中将からの文には何度も都へ来るように、と書かれているが、ずっと明石で生まれ育った為、舞にはなかなか都へ行くという気持ちにはなれなかった。
「舞、今、大堰にある邸を修繕しているから、貴女は母上と一緒に大堰へ移りなさい。
姫の事を考えたら、いつまでも明石に居てはいけません」
ある日、父である入道から舞は言われた。
「どうして、でしょう…父上様」
舞はまさか、父親から明石を離れるよう言われると思わなかったので驚き、母と一緒に父の話しを聞く事になる。
「姫の父親は光源氏様。
その謙信中将様はきっと将来、姫を天皇や皇太子へ入内させる心構えがあると思うのです。
その時、姫が明石で生まれ育ったという事は大きな傷になります。
姫には都で育ち、謙信中将様の側にいらっしゃる、紫の上様のような上流貴婦人に養育していただかなければなりません。
そうして初めて姫は、光君の姫君として堂々と入内出来るのですから」
舞はいつか姫と離れる事になる事実を、改めて突き付けられた。
「やはり…私の手元にいつまでもおいておける姫ではないのですね…
でも、都のかたにお預けして、無事にお育てくださるのでしょうか…」
舞は心配するが、入道はきっぱりと肯定する。
「紫の上様にはおこさまはいらっしゃらないし、今、謙信中将様にはおとこのお子様はいらっしゃるが、姫はいらっしゃいません。
だから貴女の産んだ姫が、謙信中将様には大切なのです。
そんな姫を、都のかたがおかしな事をする訳ないでしょう。
きっと立派な教養ある、貴婦人にお育てくださいますよ」
そして更に入道は続ける。
「舞、何も今すぐ手放すという事ではないのです。
貴女は母上と姫と大堰に移り、落ち着かれてから姫だけでも都へ移すのです。
きっとそれが姫にも貴女にもつらいけれど、結果として良いように働きます」