戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
明石では、都から遣わされた乳母とたくさんの贈り物に喜んでいた。
「でも私としては、謙信様がお越しくださるのが一番嬉しいのですけれど」
舞がぼそりと言うと、都から来た乳母が言う。
「舞様、それは致し方ございませんよ。何せ都に戻られてからの謙信中将様は、今迄以上に帝からのご信任厚うございますから、なかなか遠くにお出掛けなさる事は出来ないご様子でいらっしゃいますからね」
そして乳母は続ける。
「舞様、私は本当に幸運でございましたのよ。
謙信中将様のような上つご身分のかたが、わざわざおひい(姫)さまの乳母をお探しとなり、ご本人様自ら私にお会いにお越しになさったのです。
普通はお付きのかたがお越しになって当然の事なのですよ。
それだけおひいさまには、何か特別なお考えがお有りなのだと思います」
乳母は、謙信中将が将来産まれた娘を、入内させるところまで見抜いていた。
乳母は話し好きなところがあるようだが、もともとの資質は素直で人柄も良く、以前に仕えていた貴族の邸の同僚女房達からの評判も悪くなかった。
そんな乳母であるから、舞の鄙育ちとは思えない容姿や教養にすっかり虜になり、舞も優しい人柄の乳母を気に入り、すっかり二人は仲良くなった。
謙信中将は時折、文と一緒に都から衣装や赤子のおもちゃなど、たくさんの贈り物を手配して送ってくる。
舞はその都度、自分達は忘れられていないと嬉しく思うのだが、やはり、謙信中将本人に来て欲しい、謙信中将に会いたい、ぬくもりを再度からだに感じたい、と思うのだった。