戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
内容までは言わないが、将来の中宮となる娘が産まれるはずなのだ。
産まれたら舞が嫌がっても、受領の娘から生まれた鄙育ちの中宮と侮られないよう、都で育たせなければならない。
その為には、謙信中将は舞に対して非情になっても仕方ないと思うのだった。
謙信中将は舞に詠みかける。
此度は立ち別るとも藻塩焼く 煙は同じ方に靡かん
必ず迎えを寄越すから、都に来なさい、その想いを込めて謙信中将は詠う。
掻き集め海士の焚く藻の思い火も 今は甲斐なし恨みだにせじ
謙信中将の言葉が信じられない舞は、ただ恨みません、と泣くだけだ。
そういえば上手と聞いた筝の琴の音を聞く事がなかった。
是非聞かせて欲しいと謙信中将は、海側の邸から自身の持ってきた琴の琴を運ばせ、舞がなかなかつま弾かないのを見て、謙信中将が自ら心をこめて掻き出した。
謙信中将の弾く琴の音を聞いて、とうとう舞は差し出された筝の琴をつま弾き出す。
その音は品が良く、音が透き通って冴え、心にくいばかりの深みのある音色に聞こえた。
古い格式を踏まえた弾き様と豊かな音の響きは、流れ落ちる谷水に散る花や紅葉に似て、音が水面を舞い踊るような親しみのある音色にも聞こえて、謙信中将は目を細めて、筝の琴を弾じる舞の様子と音色を忘れないように心に刻み込む。
この音を絶対忘れない、謙信中将はそう誓い、迎えを寄越すから必ず都に来るように、と舞に念押しするが、舞はここで自分は捨てられる身と、もともとの身分差を恥じていた程なので、謙信中将の言に頷かなかった。
謙信中将は都から持参した琴の琴を、形見として舞に置いていく事にする。