戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
しかし、謙信中将は一度抱いた舞を、次になかなか求める事はしなかった。
それは都にいる女人達に遠慮したからだった。
舞は謙信中将が来ない夜を無言で耐え嘆き、やはり龍王の后になろうと何度も考えたと後で聞いた。
そして、その後、舞は、謙信中将がようやく来るようになっても、何一つ恨み言を言わず、自分の心を隠していた。
そんな舞が耐えている事に気付かない謙信中将は、季節が冬になり一人寝の寂しさから、舞の許を毎夜のように訪れるようになり、舞は少しは謙信中将と会話をするようになっており、それでもしばらく来なかった間の恨み言は一切言わない強情さに、謙信中将は内心、強い(こわい)心を持つ女人だ、と舞の矜持の高さに、改めて目を見張った。
さて、旅に出ていた謙信中将だが、あまりの長旅に、とうとう帝から早く都に戻るよう遣いが参った。
供の者達はいつ帰りましょうか、と騒いでいるが、謙信中将は懐妊しているのがわかった舞を置いて都に帰るのがつらくてならず、もう少し待て、もう少し待て、と日にちを引き延ばし、ぐずぐずと明石に留まっているのだった。
しかしながら、いつまでもこうして明石に居る訳にもいかず、謙信中将はとうとう都へ帰る事を決める。
舞は置いていかれ、忘れ去られるであろう自分の身を嘆いているが、謙信中将は何度もこういって慰めた。
「舞、おまえには俺の子が宿っている。必ずこの子を産んで育てて欲しい。
産まれてくる子は俺にとって特別な意味があるのだ」