戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
何方(いずれ)とも知らぬ雲居を眺め詫び 仄聞く宿の梢をぞ問う
しかし返事が来ない。
なぜなら娘は、謙信中将の文を見て、気後れして寝込んでしまっていた。
すると件の入道が娘の代わりに文を送ってきた。
眺むらん同じ雲居を眺むるは 思いも同じ思いなるらん
父親からの代筆の文なぞもらった事のない謙信中将は、驚いて言葉を失う。
翌日、代筆はもらった事がない、と再度、謙信中将は文を送る。
甲斐なくも心にものを悩むかな やよや如何にと問う人もなく
今度はすぐに返事がきたが、筆遣いや詠み振りは堂に入った見事なものだった。
思うなる心のほどはやよ如何に まだ見ぬ人を悩む甲斐とは
返事の内容はただの受領の娘とは思えず、謙信中将は、周囲に居る上流貴族の姫君と、そん色ない詠い振りだと思った。
-これは、思った以上の娘が、俺を待っていたのか。
謙信中将は、夢を見て呼ばれたのを、やはりこの明石の娘を自分のものにするため、とはっきり確定させる。
そして、この娘が自分との間に娘を産み、産まれた娘は入内し、最高位の中宮になる、自分の地位からして確実にそうなる、と気付く。
謙信中将は、複数の女人と関わりを持っていても、こどもは葵の上が産んだ男児一人。
駒になる女児は必要なのだ。
その駒を産むのが、この明石に住む受領の娘とは、一体どういう定めによるものか…