戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
琵琶はともかく、娘の筝の琴がどれほどのものか知りたいと謙信中将は思う。
筝の琴を入道に押しやると、さっと弾き出したが、確かに言うだけあって見事だった。
今は絶えてしまった流儀を身に着けており、古風な手遣いが、この日本に伝わる以前の唐風を見せて、琴の弦筋(いとすじ)を左手で響かせる揺の音が、なんとも深く夢幻と言うべき境地を魅せていた。
筝の琴の演奏に、謙信中将の供の良清による催馬楽が風に乗って海へ注がれ、いつの間に酒肴の席となる。
騒がしいはずだった宴もいつしか静かに終わり、それに合わせて波の音も静かに穏やかになる。
そんな中、入道は自分の事を謙信中将に話し出した。
-住吉の神に願を掛け、今年で十八年になる事。
-毎年春と秋に、必ず彼の御社に参詣する習わし。
-老いてから授かった娘は、神からの授け物と思い、娘を高貴の筋に奉る願を立てている。
その娘を、入道は、謙信中将に奉ると遠回しに言う。
入道の、自分では叶えられなかった願い。
それは自分の娘が、高貴な男の娘を産み、その子が入内して中宮になる事。
その時、自分は外祖父として権力を握る事。
いや、外戚として力を握れなくても、この入道は明石から娘の幸いを祈って、自分は今の庵から離れる事はしないだろう。
入道は自分の幸いは捨て、全ては娘へと捧げたのだ。
謙信中将は娘に文を送った。