戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
入道は少し微笑みながら話し出した。
「私は延喜帝(えんぎてい)御直伝の筝の御手を伝えて三代目になる者でござります」
一体何を言い出す?
「私の掻き鳴らす筝の琴を見様見真似で弾き出した者がござります。その者の弾き出す音色は、私に延喜帝の御手をお伝え遊ばした親王の音色と大層良く似ております。
その音色を、詳しい都のかたに是非お聞かせしたい、と願っておりました次第でござります」
謙信中将は、入道の様子と話しの内容から、中央貴族に嫁がせたいと願っている、入道ご自慢の娘の事を言っていると気が付く。
謙信中将は、入道に話しやすくする為に、筝の琴について話しを切り出した。
「筝の琴は女人のほうがよく弾くといわれているな」
入道は気付いて、謙信中将を見る。
「延喜の御代の以前、嵯峨帝御直伝の御手を、女五の宮がよくなされて当時の名手と言われていたけれど、今はそちらの流儀は絶えてしまったと聞く。
今の世に上手と言われている人の手はみんな底が浅い。
正しい奏法を伝えてる人がいるのは嬉しい事だし、是非一度聞いてみたいものだが」
謙信中将の言に、入道は何とも嬉しそうな表情に変わっていった。
そして入道は娘の自慢を始めた。
「私の娘は、筝の琴の音色を伝えますが、琵琶もよくします。
琵琶は難しゅうございますが、娘は全く見事に弾きこなし、心に沁み入るような手法は、格別としか言いようがござりません。
しかしここではその音を聞くのは巌(いわお)に砕ける波ばかりでござります。
是非謙信様にお聞きいただければ、喜ばしい事でござります」