戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第21章 明石の巻―謙信中将-<R18>
不思議な夢を見た。
明石で、謙信中将を待つおんながいる、夢だ。
だから、謙信中将は、導かれるように明石へ旅に出た。
旅は順調すぎる程、順調に進み、通常かかるより短い期間で、明石へ着いた。
海しかない、明石。
しかし、老人が一人、謙信中将が来るのをわかっていたように道端でたたずみ、謙信中将が到着すると頭を深々と下げ、お待ちしておりました、と挨拶してきた。
誰か聞く前に、老人は自分から、明石に住む世捨て人だと名乗ってきた。
その老人は、もともと家柄の良い貴族だったが、貴族の付き合いに嫌気がさし、地方任地へ向かう事になる播磨の守(かみ)という受領(ずりょう)になり、その受領中に莫大な財産を築き、そのまま当時任地としていた明石に留まり、悠々とした生活を送っていた。
明石の入道と呼ばれている老人は、海に近い邸を謙信中将に提供し、こちらにお住みください、としょっちゅうやって来ては足りないものは無いか、付き添いの者達に聞いてくれるそうだ。
何故、入道が謙信中将にこれだけ親切にしてくれるのか、はっきり言って意図がわからず不気味だ。
謙信中将が帝の息子である故、まさか、受領から都の貴族に戻りたいとでも希望があるのだろうか、そう思った事も一度や二度で無いが、入道からそのような事は一度も口に出てこず、本人も頭を丸めた今、都へ戻りたい様子の素振りも見せなかった。