戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
時々弟二人が式部卿を訪れ、姉である真木柱に新しい母となった舞が、自分達を可愛がって優しくしてくれる、やら、踏歌の折に兄が歌ったのをご覧になって褒めてくださった、など楽しく過ごしている事を話していくと言う。
真木柱は自分が身動きのとれないおんなの身である事を悲しく思っていたという。
それから、舞の実の父親、頭の中将は、髭黒の子を産んだ舞のこの幸せを良しとしていた。
尚侍として宮仕えされては、自分の弘徽殿の女御の寵が脅かされる可能性もあった為、むしろ髭黒に盗まれて申し分ないと思っているのだ。
安易な考えと政宗中将は思わないでもなかったが、実質実の娘と言っても捨てるように探しもしなかった娘なのだから、扱いもぞんざいになるのやもしれぬのか。
一人の不思議な運命を抱えたおんなはこうして、政宗中将から去って行った。
母の夕顔は政宗中将の手の中で生き絶え、娘の玉鬘は政宗中将の手の中にいながら他のおとこの手に渡り。
政宗中将のひとつの恋が終わる。
いや、それは恋と言えるようなものだったのか。
五条に住まう玉鬘の母、政宗中将が深く愛したおんな、夕顔。
過ぎ去った日々は遠く、政宗中将は光源氏の名のみ言い立てられ、実際はどれだけのおんなと出会ったのだろう、自分の正体を知らず、俺を愛してくれたのは夕顔だけなのかも知れぬ、と遠くを見つめるだけだった。
政宗中将は一人、夏の町の西の対の、主を失った部屋に立ち、ゆっくりと色を替えていく空を眺め、そしていつも舞の座っていたあたりにそっと腰をおろし、玉鬘の残り香が残っていないか確かめていた。
〈玉鬘の巻 終〉