戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
舞様に付き添っている右近殿が、その文を舞様にお見せになりました。
ながめする軒のしずくに袖濡れて うたかた人を偲ばざらめや
春の雨の中、同じ心で同じ空で見上げる人がいらっしゃるのでしょう。
懐かしい思いだけがこみあげ、政宗様の視界は煙ったとかそうでないとか。
そして、舞様には新しい人生を歩んでいくのでした。
ある日、六条院の献上品の中に、雁の卵があるのを政宗様は見付け、それを着彩させ、柑子か橘の実のようにし、舞様の許へ贈られました。
同じ巣に孵りし卵の見えぬかな 如何なる人の手に握るらん
その返事は髭黒様が贈られました。
巣隠れて数にもあらぬ雁の子を いずからにぞや取りて返さん
文を読んで政宗様はあまりに正直すぎる髭黒様の言い分に苦笑なさったとか。
その時、舞様には髭黒様のお子を宿しておいででした。
その事実を知った政宗様は、舞様への執着をきっぱりと捨てられ、おこさまは冬にお生まれになり、わたくしはようやく落ち着かれた舞様の生活に安堵したのでございました。
捨てられ、実家の式部卿の邸に戻った、髭黒の北の方は、ますます狂気をつのらせていた。
髭黒はその人だけなら何も気遣う事はなかったが、後に真木柱と呼ばれる一人娘は深く愛し案じていた。
しかし、北の方が姫を手放さない為、髭黒は気になっていてもどうしようもなく、日々を送るだけだった。