戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
御簾の中から、ひっそりと俺を見る舞の表情は、暗くてわからない。
だが、おんなは落ち着くところに落ち着くのだ。
舞も今はぐずぐずしていても、髭黒の愛に包まれ、それに狎れ、愛を受け入れるようになるのは目に見えていた。
俺の気掛かりは、髭黒の物の怪憑きの奥方だ。
あの、おんなの心を読み取れない髭黒が、物の怪憑きの妻を果たして説得出来るのだろうか。
しかしながら髭黒は、落ち着いている時の妻に、舞の事を話して説得を試みていた。
落ち着いて話しているようで、傍から見ても、明らかにみっともない程舞への愛に溢れ、髭面の中年おとこが恋を語るのは笑いものと同様である事を、自らは気付いていなかった。
妻はおとなしやかに夫の話しを聞いていた。
その姿を見ると、髭黒は長年連れ添った妻を愛しく思うのだが、やがて夜が訪れるにつれ、そわそわと舞に会いたい様子が浮き出て、女房達から失笑を買っているのだった。
「そろそろ、あちらへ行かなくてはなりませんね。あちらでは貴方様をさぞお待ちでしょう」
そう言って、妻は夫の衣装を取り寄せ、香炉をあて、たんねんに香を焚きしめる。
そんな妻の可愛らしく優しい姿に、髭黒はほろりとするが、手に入れた舞への愛が重々しくなっている今、あれこれ言い訳をしながら、髭黒の心は舞へと飛び立っていた。
髭黒が、では、と出掛けようとしたその時。
妻の様子が突然変化し、髭黒は思わぬ目に遭う。
しかし、これは病であり、妻をののしる事は反対に出来ない。