戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
「他のおとこの妻となったおまえに、もう俺はむやみに近寄る術はない。
右大将はおまえを崇め奉り大切にしているだろうから、おまえは右大将から幸せをもらい、生きてゆく全てを預けるしかないのはわかってるだろう?
自らの幸せはやつから奪っていけ」
俺の言葉に舞は、はっとしたように御簾の中から俺を見つめたようだった。
俺はもう舞には触れられぬ。
何故なら舞は曲がりなりにも、他のおとこの妻になった身だ。
その無骨なおとこの手は性急に舞を求め、常日頃俺が舞を優しく甘やかす手腕と違う事を知り、舞が俺の手管を求めても、もう俺からそれを与える事は出来ないのだ。
舞のからだは、無骨なおとこの太い指が這うのを許されるだけ、なのだ。
降り立ちて汲みは見ねども渡り川 よその背とまた契らざりしを
俺が詠うと、舞から、かそけき歌が詠われる。
三瀬川渡らぬ先にいかで猶 涙の水脈(みお)の泡と消えなん
舞は変わってしまった事実に涙を流す。
しかし、もう、どうしようもない。
それに舞は、帝から尚侍として出仕をお待ちいただいている事も事実で、俺はそれを伝える必要もあった。
「宮中からもおまえをお待ちいただいているお言葉を承っている。
もともと出仕する為に準備もしていたのだから、一度は伺わないと良くないだろう。
ただ、髭黒がそれにかこつけ、おまえを自邸に連れて行く可能性はある。
どうする?そうなったら、俺とはもう会う事は叶わないだろうな」
俺の、舞を見つめる蒼い目はどんな表情をしているのだろう。