戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
-ああ、おまえならそうしたいだろう。
-この邸は、おまえには冷たいし、無骨なおまえがそっと通ってこられるような人物でないのはわかりきっているからな。
俺は髭黒に言う。
「物事を性急に進めるのは良くない。第一、貴方には正室がすでにいられるし、そのかたにもきちんとお話しをして、新しい女人を迎える事の許可を得ないとならないだろう?」
こんな事まで教えてやらないとわからないとは、髭黒の無骨さが忌々しい。
しかし、それでも、髭黒は俺の機嫌を損ねる事を気にしたのか、俺が言った事を素直に聞き入れる。
「確かに…病がちではありますが、私には妻がある身。彼女に舞を迎える許可を一言入れないとなりませんでした」
髭黒の妻は、何もなければおとなしく家をしっかり守る、まさに出来た妻だと評判なのだが、一度物の怪が憑くと手当たり次第物を投げ、大声で聞き苦しい事を叫び、同一人物かと思ってしまう程の大暴れをするようになる、と聞き漏れている。
貴族社会は狭く、あっという間に秘密など漏れるのだ。
大人しく髭黒は帰っていき、俺は今なら、と舞の許へ足を運ぶ。
果たして舞は、憔悴しきった声で俺を出迎えるが、もう几帳をひきあげて、側へ近寄る事は出来ない。
俺がいかに舞の事を尊重してきたか、髭黒に奪われてようやく気付いたらしい。
二人の間にしめやかな空気が動き、俺はやっと、しかし重要な事を舞に伝える。