戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
几帳をめくり、集めさせ隠しておいた、蛍。
淡い光を灯す彼等を、政宗中将は舞の前に放った。
幽玄な光がゆらゆら、ふわふわと漂い、舞のいる付近を淡く照らす。
兵部卿の宮は夢幻の光に灯された舞を御簾ごしに見、その点滅する灯りの中心にいる仄かに見える舞に、当然恋を深める。
蛍の光に、急いで扇で顔を隠したものの、兵部卿の宮には舞の顔は見られたのだ。
政宗中将は、自分のものに出来ない舞を、もどかしい思いで兵部卿の宮に見せて美しさを思い知らせてやり、舞を手中に収められないゆがんだ愛を、兵部卿の宮に押し付け、罪を分かち合う。
兵部卿の宮は淡く揺らめく舞の美しい姿を思い返し、心をときめかせる。
そのまま、押し入ってものにしてしまえば良かったのだ。
そうしたら、舞は髭黒のものにはならなかったのだから。
兵部卿の宮が詠みかけた。
鳴く音だに聞こえぬ虫の思い火も 人にはやすく消されずとこそ
淡い蛍の光より、深い私の貴女への恋心をわかってください。
優美な歌で兵部卿の宮に相応しい。
声はせず身をのみ焦がす蛍こそ 言うより優る思いなるらん
舞は即座に返し、もうここにいる理由はないでしょう、といざって奥へと隠れる。
そのいなくなる衣擦れの音を聞いて、兵部卿の宮は肩を落とす。
その部屋に残るのは、兵部卿の宮の薫衣香のみ。