戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
「俺はおまえに嫌われたらつらいぞ。おまえも幼いこどもではないだろう?いいか?おとこなんて俺みたいにおまえを尊重して黙って待ってくれるやつばかりじゃあないぞ。自分の熱に打ち負け、愛おしむ花を思いのままに摘み取る、そんなのばかりだ。
そしてそれを愛だと言うんだ。俺はそんな自分勝手な事はしない。おまえの気持ちを尊重して、おまえが俺に全てを委ねても良いと思うまで、こうしてこれ以上何もしないで待ってやる」
舞はすっかり青い顔をして黙っていた。
-ああ、そんな顔をして俺を煽ってくれるなよ。
「ふっ、気分が悪いか?大丈夫だ、すぐ落ち着く。いいか?この事は誰にも知られないようにするんだ。知られると俺が今後、来にくいからな。俺はおまえに嫌われるのが何よりもつらいんだ。それはわかるよな?」
舞は無言のまま政宗中将にただ抱き締められ、何も言葉を発する事はなかった。
それすら、政宗中将には、愛おしい姿に見える。
勿論、政宗中将は舞に手をそれ以上出さず、夏の町を後にする。
政宗中将の弟宮、兵部卿の宮が舞に執着しているのは文でわかっていた。
だから政宗中将は兵部卿の宮の要望を叶える事にし、女房に書かせた文を見て、兵部卿の宮は我が邸に早速お越しになる。
廂の間に置かれた御茵(しとね)は兵部卿の宮が座る。
洒落ものの兵部卿の宮はいつも以上に香をたきしめ、穏やかな香りが辺りに香る。
御簾と几帳の更に奥に隠れた場所に、舞が座る。
そめそめと語る兵部卿の宮に対して失礼だ、と俺は舞を近くに座らせる。
そして、政宗中将は、謀(はかりごと)を実行した。