戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第19章 玉鬘の巻―政宗中将-
またこの美しさに、田舎のおとこに姫様を渡さなかったわたくしを褒めるしかない、とありがたい仰せをちょうだい致しました。
舞様は、夕顔様を思い出させ、政宗様は今すぐ夕顔、生きていたのか、と声を掛けたくなってしまった程だった、そうでございます。
「長い年月、貴女を探したけれど見つからず、半ば諦めていたのだが、こうして巡り合えた。俺は夢のように嬉しい。貴女の母、夕顔を愛した事をしみじみと思い出し、まだ貴女に語りたい事があるのに、言葉が出てこないのだ…」
政宗様は舞様にお声を掛けられましたが、姫様は、しかし、何も答えません。
「どうした?何か言葉をしゃべって欲しいのだが」
しばらくして、口を開いた姫様の口調は、政宗様が思われるよりしっかりなさっていたそうでございます。
「三つの年に、流れ漂う身になった私ですもの。お話しする事は何もありません…」
その声も夕顔様そっくりでございます。
政宗様は声を聞いた瞬間、雷に打たれてからだがしびれたように、わたくしの目からは拝見されました。
夕顔様のたおやかな身体を瞬時に思い出し、当時の夕顔様を抱いた感触が沸き上がられた。
政宗様のご様子から、こんな事を憚りながらわたくしは思ったのでございました。
光る君と世にも類まれな美しさを誇る政宗様に、わたくしはただ、ただ、姫様が早くお父君の頭の中将様とお目にかかれる事、それから姫様に過分なご縁は望みません、それなりのお幸せな結婚をお願いしとうございます。
わたくしは自分の身分を顧みず、気が付いたら政宗様にこのようなお願いを、してしまっておりました。