戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第17章 梅枝の巻―番外編-
「それだけ優れた資質を持つおとこぎみという事なのか、光秀ぎみは?」
私は政宗兵部卿の宮に問い、更に核心を持って聞く。
「それにしても、政宗、貴方さっきからどれも褒めて、全然、判になってないわね?どれもそれぞれに優れている、ばかりじゃない?」
政宗兵部卿の宮は、ふっと笑みを浮かべ、私をちらりと横目で見て、余裕の表情で答えた。
「これらの香で第一と称えるのは、前の斎院の『黒方』だな。次に優れているのは、貴女の『侍従』だろう」
おやおや、と私は思う。
「秀吉ぎみの『黒方』なら全く異存はありませんね。でも…」
「でも?」
「私の『侍従』は過分なお褒めではないかしら?」
「そんな事はない。あれは本来殿方へ伝えるものであり、女人の貴女が知る調法ではない。
それなのに、おとこぎみの調香以上に素晴らしく、きちんと伝え聞し召している」
「嬉しいお言葉だこと。でも、秀吉ぎみの『黒方』には及びませんのね?」
「心にくくしっとりした香りは、格別と言って良いだろうな」
政宗兵部卿の宮は言う。
「三成ぎみの『荷葉』は、燻らせる事自体を恥じるような、そんな趣きを感じたな」
「ああ、あのかたはそういうご性格ですからね。穏やかでつつましくて、ね」