戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第17章 梅枝の巻―番外編-
「腰結(こしゆい)の役は信長中宮にご退出いただきお願いしました。中宮に腰結をお願いするとなると通り一編とは参らず、ですから前の斎院の秀吉ぎみに、薫香をお願いするまでになってしまいました」
「なるほど」
政宗はふむと頷く。
「でも、秀吉ぎみは全くお返事もなく、調香していただけるのか気掛かりだったのですが、こうして裳着の式に合わせておつくりくださいました。やはりこういう事には、並々ならぬお心をお持ちのかたのようです」
「俺はつまらん詮索をしてしまったわけか」
「まぁ、昔を詮索されるような事をしていた、こちらも人が悪いのでしょうけれどね」
お互いが若かりし頃の暴挙を思い出し、二人で顔を見合わせてくすっと笑った。
そうして私は各町のあるじへ遣いを出し、薫香を運ばせるようにした。
雨は止み、しっとりとした空気があたりを包む。
前栽(せんざい)の葉は水を含み、けざやかな緑を見せ、雨粒が夕日を受けてきらりと輝く。
夕暮れがすぐ近くまで足音を立ててやってくる中、順々に各町から運ばれる、薫香。
寝殿の端に様々な意匠を凝らした香壺(こうご)が並ぶ。
まず、私が作ったものから、政宗に判定をお願いする。
火取りの香炉を前にした政宗の前に、私の『黒方』と『侍従』の壺を恭しく渡した。
私の調香した香は、政宗はどのように判定するかしら?