戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第17章 梅枝の巻―番外編-
ずば抜けて趣味が高く、薫香も大層良い趣味を持つ彼に、私はおとこぎみ達に依頼した薫香の評を聞こうと算段したのだった。
そんな折、朝顔の前(さき)の斎院こと、秀吉ぎみから、わずかにはなびらが残る白い梅枝に付けた文を添えて、待望のものが届いた。
「おや、俺はお邪魔だったか?」
「そういう筋のものではありませんよ。政宗にお越しいただいた理由がこれなんです」
私は政宗兵部卿の前で、届いた物を開ける。
沈製の筥(はこ)の中には、二種類の練香の粒が豊かに器に盛られていた。
そして、秀吉ぎみからの文は、さらりと白い薄様の紙にたった一首。
花の香は散りにし枝に留まらねど 移らん袖になおぞ床しと
「へえ、貴女と秀吉の間に起きた事は、今も続いてたんだな」
政宗兵部卿の宮の言葉に、私は苦笑し、返しの算段をする。
以前の事はもう昔、今は文通で趣味を語り合うだけの仲、なのよ。
私からの文の返しは白梅の枝から、紅梅に代わる。
花の枝にいとど心を染むる哉(かな) 人の咎めん香をば包めど
私はさらりとお礼の文を書き、最後に歌を記し、紅梅の枝に付ける。
私は文を書き終えると、政宗兵部卿の宮に言う。
「実のところ、政宗に薫物合わせの判者をお願いしたいのです。一人娘が裳着の式をし、親から離れ人として成長するため、親として出来る事をして祝ってやりたいんです」
「成程、そういう事なら引き受けよう」