戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第15章 空蝉の巻―信長中将-<R18>
紀伊の守が任国の紀州へ下り、邸がおんなだけになる日がやって来た。
おんな達がのどかにくつろぐある夏の日、信長中将の乗る牛車がゆるゆると進み、件のおんなの住まう邸へ到着し、付き添う小君が北の門から牛車を中に引き入れる。
信長中将を隠すように下ろし、小君と共に寝殿の東の端に赴く。
「お頼み申します」
小君はそう言って、下してある格子を押し上げ、中へ入っていく。
すると、女房が、小君が格子を大きく開け放した事を咎めているのが聞こえた。
「こんなに暑いのに、どうして格子を下ろしてるの?風が通らないよ?」
小君が聞くと、別な女房が答える。
「西の対のお嬢様がいらして、碁をお打ちでいらっしゃるのですよ」
それを聞いて、信長中将は、格子の外に下げてある簾の中に入った。
小君が上げて入った格子の板戸はそのままになっており、信長中将が中を覗く事が出来る。
また、入口の近くに目隠しとして普段は使っているだろう屏風も畳んであり、その奥の几帳も垂れを上げて風通しを良くしようとしているのか、おかげで丸見えとなっている。
母屋の中央におんなが二人向き合って座っていた。
信長中将から逃げる舞は、濃紫の綾の単を二枚襲(にまいがさね)にして、相手にもはっきり面を見せないようにややうつむいている。
もう一人のおんなは、白い羅(うすもの)の単襲(ひとえがさね)。