戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第15章 空蝉の巻―信長中将-<R18>
数ならぬ伏屋(ふせや)に生うる名も憂きや あるにはあらで消える帚木
何故このように信長中将を拒むのか、おんなの気持ちがわからない。
それと同時に腹立ちの心は押さえ切れず、おんなの強情を突き破りたい思いが強くなる。
脇息を抱えるように座る信長中将は、小君にいらだった様子で命令する。
「小君、俺を姉の隠れているところへ連れて行け」
信長中将は小君に言うが、小君は案内出来ないと断る。
「とても狭い上に人が大勢いて、とても案内出来るようなところではございません」
そう。渡殿(わたどの)の女房達のひしめくあたりへ、おんなは逃げていたのだ。
暗いうちに、紀伊の守の邸を、信長中将は後にした。
おんなのところに踏み込めず、それ以上居ても仕方なかった。
信長中将がつきまとい、おんなは求愛を拒む。
あの光る君を拒み、己を立てたおんな、として都中の評判になるのだろうか。
それは許されない。
どうしてもあのおんなをもう一度、己の腕に。
信長中将という面目にかけて。
小君に役立てとけしかけ、機会が来るのを待つのだ。
信長中将の赤い瞳は、光源氏という自分を拒むおんながいる事が許せず、矜持を踏みにじられた怒りで充血したようにいつも以上に赤く染まっていた。
その表情に、小君は何としてもこの希望は叶えないとならない、と思い知る。