戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第15章 空蝉の巻―信長中将-<R18>
信長中将は、舞の弟、あの、衛門の督の子を側で使いたい、と紀伊の守に伝える。
信長中将の名においてこの子を童殿上(わらわてんじょう)させれば、紀伊の守が己のちからで殿上させるのとは、破格の扱いになるだろう。
信長中将はこういう時の権力の使いどころが、面白いと思うようになっていた。
紀伊の守は、自分のこどもを殿上させる事でいっぱいで、だから、信長中将からの申し出を喜んで受ける。
早速、衛門の督の子が、信長中将の許へ参じる。
信長中将は『小君(こぎみ)』とその少年を名付け、姉の、伊予の介の妻へ文を持たせる事にする。
「良いか、小君、俺と貴様の姉は、もともと恋仲だったのだ。しかし当時は俺の身分も低く、貴様らの父上が亡くなられた後、貴様の姉は俺を見限って伊予の介の許へ去ってしまったのだ。つまり、もともと俺と貴様の姉は文のやり取りをする仲だった。貴様、だから、また姉へ俺の文を持って行くが良い」
「かしこまりました」
信長中将の言う事を素直に信じる小君。
どうって事ない少年だが、物腰に品の良さは感じられ、何くれとなく話し掛けてやると嬉しそうに信長中将を見やるところが可愛い、と信長中将は思うのだった。
伊予の介の妻となった姉は、小君から文を渡され、中を開いて青ざめる。
見し夢を現(うつつ)と移す夜やありと 嘆くに時ははや過ぎにけり
もう、二度と犯してはならないあの一夜を、この文で思い起こさせられた。