戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第15章 空蝉の巻―信長中将-<R18>
おんなが夜具を被ったまま、こもった声で言うと、別なおんなの声がした。
「下屋へお湯を使いに参ってます。すぐ戻ると申しておりました」
「そう」
一言答えて、沈黙が訪れる。
俺は静かに移動し、東西を区切る障子の掛け金、そっと引き上げて外す。
障子をそっと開けると、おんな側では掛け金を下していなかったらしく、すっと開き、障子の手前の几帳と、唐櫃(からびつ)のようなものがいくつも置かれ、ごったがえしている様子が暗い中で見て取れた。
俺はゆっくりとその間を抜け歩き、その先に小柄なおんなが横になっていた。
見付けた、と、俺はおんなの夜具としてかかっている衣を、そっと押しやる。
そしておんなの耳元で、俺の低音を響かせる。
「“中将”をお召しなのだろう?」
俺の官職は『近衛の中将』だ。
おんなは、何が起きたのかわからない様子で、数瞬呆然とし、すぐ怯えた一声をあげる。
「戯れではない。貴様が父君の意向で宮仕えをする予定があったのは知っている。
その頃から俺は、貴様に焦がれていたのだ。それなのに、貴様は父君が亡くなり、このような伊予の介の後添えになるしかなかった」
俺はおんなが怯えているのを知りつつ、おんなを抱き締めて話し続ける。
「俺の思いは浅からぬものだ。こういった折を待っていた俺の思いを知るが良い」
おんなは息も絶え絶えにやっとの事で俺に言う。