戦国源氏物語-イケメン戦国と源氏物語の融合-〈改訂中〉
第15章 空蝉の巻―信長中将-<R18>
その日、信長中将は左大臣の屋敷へ、宮中を退出して向かった。
左大臣の屋敷では歓迎してもらうが、歓待がすぐざわめきに代わる。
何故なら、その日、信長中将にとって左大臣邸の方角は方違え(かたたがえ)であり、一晩を過ごして良い場所では無かった。
信長中将の常の住まい、二条院も方角は同じなので、そちらに戻る事も出来ない。
信長中将は、方違えである事を知っていたのか知らなかったのか、面倒くさがる。
「ここで良い。もう今更、他へ行くのも面倒だ」
「いいえ、そういう訳にはまいりません」
左大臣邸の者たちから乞われ、紀伊の守(きのかみ)の邸へ行く事になる。
紀伊の守は突然の事に、困惑を隠せずにいるが、信長中将をもてなす準備を急ごしらえではあるが、寝殿に用意していた。
庭に引き込んだ中川の面(おもて)を渡るのか風は涼しく、蛍が飛び交う。
「なかなか風情があるな」
信長中将は直衣の着流し姿になって、脇息に寄りかかりながら紀伊の守を褒める。
その時、どこからかおんな達の声がした。
耳を澄ますと、信長中将は寝殿の東にいるが、おんな達は寝殿の西側にいるらしい。
「あの声は?」