第1章 1
「それで、」
「へ?うん?」
話が一段落ついたので気を抜いていた僕に、美咲ちゃんが話しかけてきた。
つい間抜けな声で返事をした僕は、ちょっと恥ずかしくて少しだけ頭を掻いた。
「youさんは今、何をやってらしたんですか?・・・ひょっとして私、彼女さんとの時間を邪魔しちゃいましたか?」
「そんなことあらへんよ。僕は・・・・・・これから“ヴァンパイア”になって、“Hunting”に出ようかなーと」
「えぇ??」
今度は美咲ちゃんが変な声を出す番だ。
・・・・・・僕も自分の言葉にビックリしたけど。
「ゆ、youさん??何か変な物食べましたか?それとも体調が悪いとか・・・」
「・・・いや、何でもない・・・」
僕は顔を赤くしながら先程の言葉を取り消した。
「何も食べてへんし、具合も悪くないんやけど、ちょっと・・・ね・・・」
曲がなかなか浮かんでこない苛立ちと、メンバーを待たせているという焦り、そして良い曲を書かなければという想い。
全部がごちゃ混ぜになって、僕の頭の中で渦巻いている───。