第2章 第1章 旅立ちまで
「で、でも...それは...」
雪絵が喜びながらもそれを躊躇うのには理由があった。
それはこの国にで起きた最悪の事件と言っても過言ではない出来事が原因だった。
この国の決まりはできた当時、狩人の差し出しと言われ、国民の認識は国へ自らの子供を生贄に出すのと同じことというものだった。
だからからか、子供を渡す家族は決して多くなかった。
つまりそれは『狩人』が不足し、『宝晶』が手に入らなく、古代生物維持が不可能になるのと同じことだった。
この事態に国は黙っていなかった。
能力を持っている子供を持つ家族に対して、脅迫に近い声明を出したのだ。
【子供を差し出さなければ一家を皆殺しにする】
ただその一言だった。
しかし、その一言は国民を凍りつかせ、怒りに震えさせるには充分過ぎたのだ。
国民は武器を持った。
国はそれに対抗した。
つまり、起きてはいけないことが起きたのだ。
国が行った、国民大量虐殺。
抵抗した国民の大半は自らの子が能力を持った者達だった。
その家族を捕らえ、能力者の居場所を吐かせる。
吐かなければ...殺す。
今考えればありえない出来事だ。
しかし、当時の国は相当追い込まれていた。
つまり国も我を忘れるほど必死だったのだ。
だからといってその行為は許されるものではない。
虐殺が起きた年、国は虐殺を指示した者を処刑し、決まりを作った。
それが先程の決まりである。
国民はこの虐殺事件を知っているため、大人しく子供を差し出すようになった。
それがどんなに不本意であろうと。